知的障害の方が長期的に無理なく仕事を続けられる環境とはどのようなものでしょうか。また、どのような福祉サービスからサポートを受けるとよいのでしょうか。自分の障害の特性を知ることで、希望の仕事を見つけ、長く働くことができます。知的障害の方を対象とする就労サポートはたくさんあるため、比較検討して自分に合うものを選択することが重要です。
そこで今回は、知的障害者の方の抱えやすい悩みについて解説したのち、利用できる就労サポートを6つ紹介します。ぜひ参考にしてください。
目次
知的障害の方が就職し、安定的に働くためには適切なサポートが重要
知的障害の方が就職、転職で抱えやすい悩み
健常者、障害者問わず新しい職場に順応するには時間が必要です。就職や転職をした直後、新しい職場でさまざまな悩みを抱えてしまうこともあるでしょう。ほとんどの悩みは仕事を覚えるにつれ解消されていきますが、悩みが原因で早期離職につながってしまうこともあります。ここでは、仕事を始めたばかりの方が抱えやすい悩みとして特に多く聞かれるものを5つ紹介します。
業務内容のミスマッチがあった
就職するさいに自分の担当する業務についての認識が不足していた場合、環境に適応できない可能性があります。想像していた仕事内容からかけ離れた業務を担当することになってストレスを感じたり、そもそも業務内容を理解できなかったりといったトラブルが発生します。
業務内容にミスマッチがないように、入社前に企業見学や実習を重ねるべきです。仮に採用をもらったとしても、改めて業務内容をきちんと確認し、入社するかどうかを判断しましょう。
集団のルールが分からなかった
会社に就職したのち、会社組織の集団のルールがわからずストレスを抱えてしまうケースがあります。会社では一般的な集団のルールだけでなく、会社独自に定められた就業規則にも従う必要があり、それらを覚え、ルールを守って業務を行うには慣れが必要です。
仕事を始めたばかりのころは、上司や担当者にルールの確認をしたり、職場で研修などが実施されていれば積極的に参加しましょう。就労定着支援事業を利用している場合はスタッフに相談することも有効です。
業務のやり方が覚えられなかった
知的障害をもっている方は、特性上、業務の進め方をなかなか覚えられない場合があります。もちろんどんな人でも初めから完璧に業務をこなせるわけではありませんので、徐々に仕事を覚えていけば問題ないのですが、他の人と自分を比較して焦ってしまい、過度なストレスを抱えてしまうこともあります。
なかなか業務内容が覚えられない場合は、メモを取ったり写真を撮ったりすることが有効です。メモを取る行為は、一生懸命仕事をしているアピールにもつながり、周囲からの協力を得やすくなります。また、自分のペースで仕事を着実に覚えていくという心づもりで、自分と他の人を比較しない、ということも大切です。
スケジュール管理ができなかった
知的障害がある方は、スケジュール管理が不得手で計画的に行動できない場合があります。スケジュール管理が難しいと、遅刻を繰り返したり、締め切りを守れず周囲に迷惑をかけ、会社の利益を損なってしまう、といったミスにもつながります。
スケジュール管理が苦手な方は、対策としてスケジュール表をつけるとよいでしょう。
また、勤務終了時に翌日の予定を確認するなど、事前の準備をしっかりするようにしましょう。
報告・連絡・相談ができなかった
報告や連絡、相談ができずに上司などから注意され、自信を失ってしまうケースがあります。報告、連絡、相談は仕事を行ううえでは非常に重要であり、あらゆる職場で意識しなければなりません。会社では多くの人が連携して働いているので、せっかく業務を終えているのに、報告がなかったせいで他の人の業務が進まなかった、といったトラブルも考えられます。
報告や連絡、相談を忘れてしまう方は、自助努力はもちろんのこと、あらかじめ会社にその旨を伝えておき、定期的に仕事の進捗を確認してもらう必要があります。
知的障害の方が就職し、安定的に働くためには適切なサポートが重要
知的障害の方が長期的に就労していくためには、適切なサポートが必要です。もちろん自分自身の頑張りも重要ですが、定期的に相談できる相手をみつけて、悩みを相談したり問題点を解決できる環境をまずは構築しなければなりません。
会社の中に相談できる相手がいることは必須ですが、同じ会社の人には相談しづらい悩みごとが発生することも多々ありますので、会社の外部からもサポートを受けられるように、福祉サービスを利用することをおすすめします。
知的障害者の方が利用できる就労支援のサービスはたくさんあります。ご自身のニーズにあうサービスはどのようなものか、比較検討しましょう。
知的障害の方が使える就労サポート6選
知的障害を持っている方が利用することのできる就労支援サービスは多岐に及んでいます。それらをうまく活用することで、不安や悩みを抱えることなく働けるでしょう。今回は代表的なサービスを6つ紹介します。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、障害のある方や難病をもっている方に対して、就職活動全般をサポートする施設です。就労移行支援事業所ではビジネスマナーや面接スキルほか、パソコンスキルなど就職するためのさまざまなスキルを身につけることができます。
利用できる期間は原則2年で、18歳以上65歳未満の方が対象です。費用は前年の所得により異なりますが、生活保護や低所得者の方は無料で通所できます。利用料金には上限が定められているため、仮に所得があった場合でも高額になるわけではありません。
就労移行支援事業所利用して仕事に就いた場合、6か月間の職場定着サポートを受けられます。また、就労定着支援事業という別の福祉サービスを併せて行っている事業所も多く、その場合はさらに2年、職場定着サポートを継続して利用できます。業務のスキルアップや苦手克服といったことのほか、職場の人間関係などの悩みなども相談に乗ってもらえます。人間関係の悪化は離職の大きな原因ですので、コミュニケーションに不安を抱えている方はぜひ就労移行支援事業所のサポートを受けましょう。
ハローワーク
ハローワークは障害をもっていない方も利用する施設ですが、障害について専門的な知識を有した職員・相談員に就職に関する相談を行うことができます。そもそも、求人を探すさいにハローワークを利用することはほぼ必須です。ハローワークには障害者向けの求人も多数登録されています。
また、ハローワークでは新たなスキルを身につけるための職業訓練を実施しています。基礎的なパソコンスキルに加えプログラミングやCADのほか、介護職の研修やネイリストになるための講座などもあり、学べる内容は多岐に及んでいます。興味のあるものがあれば受講を検討しましょう。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害を持っている方の就職、職場適応、復職などを支援している施設です。各都道府県に設置されています。職業評価、職業準備支援、ジョブコーチ、リワークなどが主なサポート内容です。また、障害のある人を雇用する企業向けに、雇用管理に関する課題を分析したり、適切な支援計画を策定するといったことも行っています。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターとは、障害を持っている方が生活と仕事を両立できるようサポートを行う施設です。就労面と生活面、両方の観点から一体的なサポートを行います。
就労の支援として、職業スキルの確認や職業準備訓練、就労移行事業所など、関係機関の紹介や連絡調整を行ってくれます。また、就職後も長期的に働けるように、障害者就業・生活支援センターでも就労定着支援を受けられます。
生活面での支援としては、生活習慣の見直し、健康管理、金銭管理等、日常生活の自己管理に関するアドバイス、住居、年金など生活設計に関するアドバイスを受けられます。
無料で利用できるので、利用にあたって金銭面の心配をしなくてよいのもメリットです。
就労継続支援A型事業所
就労継続支援A型とは、一般企業での就労が困難な方に対して就労の機会を提供するサービスです。障害者手帳を持っているかどうかは関係なく、18歳~65歳までの方で医師の診断書などがあると利用できます。就労経験がある方も、初めて仕事をする方も共に利用しています。
就労継続支援A型での仕事としては、パンやお菓子などの製造、パソコンなどのデータ入力、清掃、配達業務、ホールスタッフなどが一般的ですが、なかには動画の編集やプログラミングなど、専門的なスキルを活かせるような業務もあります。雇用契約を結んで仕事を行うため、就労継続支援A型では最低賃金以上の給与が支給されます。令和3年の厚生労働省のデータによると、就労継続支援A型で働いている方の月額平均給与額は8万1,645円でした。就労継続支援A型を利用するさいは、将来的に一般企業での就職へステップアップすることが望ましいです。スキルや経験を積むことで、一般就労に移るための自信をつけていきましょう。
就労継続支援B型事業所
就労継続支援B型事業所は、上記で解説した就労継続支援A型事業所と似た福祉サービスです。両者の違いは、雇用契約を結ぶかどうか、ということです。就労継続支援A型で働く場合は事業所と雇用契約を結ぶため、最低賃金が保証されます。しかし、就労継続支援B型は事業所と雇用契約を結ばないため、給与は発生せず、工賃を受け取るという扱いになります。
雇用契約を結ばないため、就労継続支援B型はA型に比して収入が少ない傾向にあります。反面、仕事の自由度は高く、週に一度や一日数時間などの利用も可能であり、ご自身の体調やメンタルの状態を考えながら働けるというメリットがあります。
仕事内容は、就労継続支援A型と比べると簡易的な作業が多く、農業や清掃、部品の組み立てなどが挙げられます。比較的軽作業などの仕事が多く、体に負担をかけずに働くことができます。障害年金や親族の金銭的なサポートが受けられ、就労の経験を積みたいという方は就労継続支援B型を利用を検討してみてください。
知的障害の方のお仕事探し参考
知的障害の方が従事している業務として多くみられるのが「軽作業」「事務」「清掃」「調理補助」などです。仕事選びの参考として、主としてどういったことを行うのか、それぞれに解説します。
軽作業
軽作業は決められた作業を繰り返す業務が多く、突発的な変化が少なく取り組みやすい仕事です。日々の経験を活かすことができ、業務に慣れてしまえば働きやすいと感じるはずです。
軽作業の代表例としては、製造業での部品の組み立てやピッキング、梱包や封筒などへの封入作業、食品製造業での食材のカットや盛り付けなどがあります。特別なスキルや経験が必要とされず、重いものを持ち上げるといった力仕事も少ない場合が多く、仕事に就くのが初めてでも無理なく取り組むことができます。
事務
パソコンを扱える方は、事務職も視野に入れるとよいでしょう。事務職の一般的な業務内容は、パソコンを用いてのデータ入力や勤怠管理、書類作成などです。事務職に就くためには、パソコンの操作が必要です。タイピングスキルや資格を必要とするケースがありますので、タイピング検定やWord、Excelといったofficeソフトなどの資格を持っていると、就職活動を行ううえで大きなアピールポイントとなります。
清掃
清掃の仕事は毎日同じルーティンが組まれていることが多く、業務位内容の変化が少ない職種といえます。成果が目に見えることに楽しみを感じ、やりがいを見つけられる仕事でもあります。
調理補助
飲食業や食品加工を手掛けている会社での業務です。野菜や果物などの食品を洗ったり、包丁を用いてカットしたりといったことのほか、簡単な調理を任されることもあります。
料理をするのが好きな方にとって、長所を生かせる仕事です。
まとめ
今回は、知的障害の方が利用できる福祉サービスについて解説しました。知的障害を持っていたとしても、それぞれのサポートをうまく活用することで、希望の職種を見つけやすくなります。また、就労後のサポートも併せて利用することで、安心して長期的に働けるでしょう。どういったサービスを利用するのがよいか迷っているかたは、就労移行支援事業所ソース堺東・三国ヶ丘にお気軽のお問い合わせください。
【監修】佐古順子
就労移行支援事業所ソース堺東 所長
職場適応援助者(訪問型ジョブコーチ)
ビジネス実務マナー3級
メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種
2024年度 就職者 32名!!
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