障害福祉サービス「就労定着支援」についてご存じでしょうか。就労定着支援を利用すると就職した職場で長期的に無理なく働くためのサポートを受けられます。
今回は、就労定着支援の利用条件や費用などについて解説します。障害を持っていて、就職した後のサポートを希望する方はぜひ参考にしてください。
目次
就労定着支援とは?
就労定着支援は2018年度からスタートした福祉サービスです。障害を持っている方が長期的に無理なく働けるよう、サポートを行う制度です。従来までは障害者就業・生活支援センターという組織が支援を行っていましたが、より専門的なサポートを行うために就労定着支援サービスが導入されました。
就労定着支援のサポートを利用すると、仕事に就いたのちにミスをして悩んだり、他の社員とうまくコミュニケーションをとれない、といった困りごとに対して、就労定着支援のスタッフが相談に乗ってくれ、解決策を一緒に考えてくれます。障害特性によって会社になじめず、就労上の問題を抱えている方は非常に多く、ひとりで悩んでいると問題がいつまでも解決しなかったり、最悪の場合離職に至ります。就労定着支援の制度を活用し、サポートを受けることが望ましいです。
就労定着支援が導入された背景
就労定着支援が導入された背景には、民間企業にたいする障害者雇用率が関係しています。日本では一定規模の企業に対して障害者を雇用することが義務づけられており、障害者を雇用すべき人数の割合・障害者雇用率の数値は年々増加しています。このことにより、一般企業で働く障害者が増えました。障害を持っている方の雇用が増えているのはよいことですが、他方、就職してもすぐに離職してしまう方の数をいかに減らすかが課題となっています。
離職率は障害の種類により大きく異なり、精神障害の方の場合は離職率が高い傾向があります。環境の変化により過度な不安を抱えてしまったり、同僚や上司とのコミュニケーションがうまくいかず、孤立感やストレスを蓄積してしまうケースが多く見られ、それらの問題を解決するためのサポートが必要とされています。
独立行政法人障害者職業総合センターの2017年度のデータによると、就職してから1年後の職場定着率は、身体障害…60.8%、知的障害…68.0%、精神障害…49.3%、発達障害…71.5%です。精神障害者の方の職場定着率が特に低く、対策が求められています。
就労定着支援の目的
就労定着支援の目的は、障害を持っている方の早期離職を防止し、長期的に企業で働けるようにサポートを行うことです。仕事をする上で、障害を持っている方が直面する様々な課題(体調管理、人間関係、仕事内容など)を早期に発見し、解決策を見つけることを目指します。
障害のある方が一般企業で働き続けるためには、個々の状況に合わせたきめ細やかな支援が必要となります。また、当事者だけでなく職場や医療機関、家族のあいだの連携も重要です。就労定着支援は、障害者を取り巻く就労環境のなかで起こりうる問題に対し、様々な側面からサポートを行う福祉サービスです。
就労定着支援の利用条件
就労定着支援を利用するためにはいくつか条件を満たす必要があります。どのような条件があるかを確認しましょう。
利用対象者
就労移行支援や就労継続支援、生活介護、自立訓練などを利用して一般就労した方が就職定着支援のサポートを受けることができます。また、すでに企業に就職しており、障害特性に起因する課題を持っている方も利用対象となります。この場合、休職中の方でも就労定着支援のサポートを受けることが可能です。
利用期間
就労定着支援の利用期間は、最長で3年です。就労移行支援や就労継続支援を利用したさいは、在籍していた事業所による半年間の職場定着支援が別途行われます。その後、さらに定着支援を希望する場合に、就労定着支援を利用することができます。サポートを行う制度が途中で切り替わるために少々複雑ですが、就労移行支援による職場定着支援(6ヶ月)と、就労定着支援による職場定着支援(3年)を続けて利用すれば、最長で3年6ヶ月のあいだサポートを受け続けることが可能です。
就職活動をするさいに利用した就労移行支援事業所などが就労定着支援事業を併せて行っている場合、3年6ヶ月のあいだずっと同じ事業所からサポートを受けられます。就労定着支援事業を行っていない事業所を利用していた場合、6ヶ月の職場定着支援ののち、就労定着支援事業を実施している他の事業所に定着支援の申し込みを行う必要があります。
同じ事業所から長期に渡って継続した職場定着サポートを受けることを希望される方は、就労定着支援事業を行っている就労移行支援事業所、就労継続支援事業所などを利用して就職活動を行うとよいでしょう。
利用料金
利用料金は、就労定着支援を利用する当事者と、その配偶者の所得により決定されます。生活保護で暮らしている方や低所得者の方は、基本的に無料で利用できます。両親や親族の所得は利用料金の決定に影響しません。負担額が発生する場合でも上限が定められており、ひと月に利用した日数、時間が長くとも、上限額以上の負担は生じません。
就労定着支援を実施している福祉サービス
就労定着支援を実施している福祉サービスはいくつかあります。具体的にどの施設で利用できるかを確認しましょう。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、障害や難病を持っている方を対象に、就職までの支援を行っている福祉サービスです。活動内容はおおまかに職業訓練、就職活動のサポート、職場定着支援に大別され、職業訓練においてはパソコンやビジネスマナーの講座、就職活動のサポートでは模擬面接や企業実習、面接同行などを実施しています。
就労移行支援においては、利用者が就職したさいに6ヶ月の職場定着支援を実施します。上述したように、これは今回取り上げている就労定着支援とは別のサービスです。就労移行支援による定着支援(6ヶ月)が終了したのちに就労定着支援による定着支援(3年)を続けて利用することができるので、最長で3年6ヶ月のあいだサポートを受け続けることが可能です。
ただし、就労定着支援事業をそもそも実施していない事業所もありますので、利用前に確認しておくとよいでしょう。
就労継続支援A型・B型
一般企業に雇用されることが困難な方に対して、就労の機会や、生産活動の機会を提供する福祉サービスです。雇用契約に基づいた、比較的一般企業に近い形での就労が可能であればA型、体調や障害特性により雇用契約を結んで働くことが困難な場合はB型を選択します。
就労移行支援の場合と同様、就労継続支援をステップに一般企業に就職した場合、通所していた事業所から6ヶ月の職場定着支援を受けることができ、その後、就労定着支援による3年間のサポートを利用することが可能です。
その他の団体
その他、自立訓練、生活介護といった福祉サービスを利用したさいにも就労定着支援を利用出来るケースがあります。
就労定着支援の具体的な支援内容
就労定着支援では、就業中の障害者が長期的に無理なく働ける環境づくりを目指します。具体的にどのような支援内容があるかを解説します。
障害者、雇用先企業との面談を通じて課題を把握
スタッフと定期的に面談を行い、悩みごとや課題に対する解決策を考えます。勤務状況や職場での働き方はもちろん、生活リズムやメンタルの状態など、さまざまなことを相談することができます。
また、就労定着支援のスタッフは企業側の担当者とも面談を行い、当事者の方の職場での様子や、企業側の要望などをヒアリングします。就労定着支援を利用している当事者の方のお悩みはもちろん、雇用先の企業の有している悩みについても対応します。
家族や雇用企業、必要な関係機関との連絡調整
就労定着支援のスタッフは、当事者の方の雇用先企業や家族、かかりつけの医療機関、その他利用している福祉サービス事業者のあいだの連絡調整を行うこともあります。
課題解決のための訓練の実施
上記の面談を通じて見つかった課題に対して、適切なトレーニングを実施します。体調が不安定で生活リズムが乱れている方に生活リズム改善についての助言を行ったり、事務職などでパソコンの操作に習熟する必要がある方に対しては、パソコンスキルアップのためのプログラムを実施し、学習の機会を設けます。ビジネスマナーに課題のある方についてもビジネスマナー講座への参加を促す、といった、各人のそれぞれの課題を解決し、職場でよりスムーズ働けるようなトレーニングを行います。
就労定着支援を利用するメリット
就労定着支援を利用することは、障害を持っている当事者と企業側の双方にメリットがあります。企業側と就職側、それぞれのメリットについて解説します。
就職者側
就労定着支援を利用すると、就労に関する悩みなどを相談出来る、というメリットがあります。仕事をはじめたばかりのころに、障害特性に由来するストレスを抱えてしまう方がたくさんいます。ストレスを抱えたまま働くと、離職する可能性が高くなります。また、短期間での離職を繰り返してしまうと、その後の仕事も見つけづらくなります。
長期的に働ける環境を作るには、福祉的な知識を持ったサポートスタッフに悩みや仕事上の問題点を相談し、対策を練ることが大切です。また、就労定着支援は当事者と企業の間を取りもつ役割も果たします。就職した企業の担当者とうまくコミュニケーションがとれない方は、就労定着支援を利用することで問題を解決できる可能性があります。
企業側
就労定着支援を企業側が利用するメリットは、障害福祉に関する専門家から、働き方や職場の環境構築に関するアドバイスを受けられることです。近年、障害者の法廷雇用が引き上げられ、このタイミングで障害者の雇用を初めて行う企業も増加しています。障害特性に対する知識が不足しており、どういった配慮を行えばよいのか手探りの状態、という企業もたくさんあるのではないでしょうか。そういった場合、就労定着支援を担当しているスタッフに相談し、アドバイスをもらうことが可能です。
また、障害当事者にたいして就労移行支援や就労継続支援を行っていた事業所が引き続き就労継続支援を担当している場合、当事者の方とスタッフの間にすでに信頼関係が構築できているので、当事者の方が抱えている企業側に話しづらい悩みごとを聞き出してくれたり、企業側の要望を当事者の方にうまく伝達してくれることでしょう。
就労定着支援の申し込み方法
就労移行支援事業所、就労継続支援A型事業所、B型事業所を利用中であれば、就職後に就労定着支援を利用したいとの旨をスタッフに相談してみてください。
すでに就業中、休職中である場合は、ご自身が住んでいる障害福祉窓口や相談支援窓口にお問い合わせください。
まとめ
今回は、就労定着支援の利用条件や利用内容について解説しました。就労定着支援を利用すると、障害を持っている方の就職後の困りごとを解決し、長期間安心して働くことのできる環境を整えるためのサポートを受けることができます。有用な制度ですのでぜひ利用をご検討ください。
【監修】佐古順子
就労移行支援事業所ソース堺東 所長
職場適応援助者(訪問型ジョブコーチ)
ビジネス実務マナー3級
メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種
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