「ADHDなどの発達障害を持っているので就職活動が不安…」という悩みにどのように対処すべきでしょうか。ADHDに起因する長所と短所を理解することが、希望の就職先を見つけるうえで大変重要です。そのために、上手に福祉サービスを利用することをおすすめします。
今回は、ADHDの人が利用できる就労サービスを紹介。ADHDの人が就職活動で気をつけるべきポイントも解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
ADHDの特徴とは?
そもそもADHDとはどういった障害なのでしょうか。ADHDの主な障害特性として、「集中力が続かない」「作業が不正確」「順番を待てない」ことなどが挙げられます。
ADHDの人はご自身の短所ばかりを気にしてしまい、自分をうまくアピールできずに採用が決まらないケースがあります。ADHDを持っている人は、ご自身の特徴を過度にネガティブに捉えずに就職活動を行わなければなりません。
ADHDの人が就職するときに考慮するべきポイント
ADHDの人が就職活動を進めるにあたって、まずは自分の特性を理解することが重要です。ご自身の障害特性を理解しないと、会社側に自分のことを伝えることができません。自己理解が就職活動を進めるうえでの重要な第一歩なのです。それを踏まえ、ADHDの人がどのように就職活動を進めていくべきか、ポイントを解説します。
一般枠か障害枠かの選択
ADHDの人が就職するさい、一般枠と障害者枠という2つの選択肢があります。ADHDの症状の状態が重いと、一般枠で就職できない可能性があります。障害者枠で就職すると、障害特性に起因する困りごとについて、サポートを受けやすくなります。ご自身がどちらの枠で就職活動を行うべきかについては、医師や福祉事業所のスタッフなどと相談するのがおすすめです。
ADHDの人が一般就職で採用されたとしても、会社になじめなければすぐに離職する可能性があります。また、ADHDだからといって障害者枠だけにこだわる必要もありません。柔軟に考え、どちらかの枠に過度に固執しすぎないことも大切ですが、方針を決めておいたほうが就職活動を進めやすいでしょう。
自分の得意分野、不得意分野を把握する
自分のできる分野、不得意な分野を把握することも重要です。苦手な作業のある会社に就職すると、すぐに辞めてしまうリスクが高まります。企業分析を入念に行い、業務の確認を行うとよいでしょう。自己分析と同様に、企業を知ることも非常に重要です。
企業分析をきちんと行なわないと、その会社が自身に合っているかどうかがわかりません。就職したい会社の理念や社風、業務内容、採用情報などを詳しく調べておきましょう。
ADHDの人が受けられる就労支援サービス
就労サービスや福祉サービスを活用することで、希望の職を見つけやすくなるうえ、就職活動の負担を軽減することが可能です。ここでは、ADHDの人が利用できるサービスをいくつか紹介します。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所のサービスを利用すると、さまざまなメリットを享受することができます。就労移行支援事業所は、65歳未満の就労を希望する人を対象としています。障害者手帳を持っていなくても医師の診断書があればサービスを受けられます。
就労移行支援事業所を利用しても、費用はそれほどかかりません。生活保護を受給している人や前年度に収入が無かった人は、基本的に無料で利用できます。収入があった人でも自治体の補助があるのでそれほど高額な利用料金は発生しません。
就労移行支援事業所では主に、体調管理や仕事に就くための各種スキル、資格を取得するためのトレーニング、面接対策、仕事に就いた後の定着支援などを行っています。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、ADHDなどの障害をもっている方が安心して暮らせるように総合的な支援を行う施設です。発達障害者支援センターは、発達障害の当事者やその家族の生活の質の向上を目的とし、発達障害の方の困りごとの相談や助言を行っています。障害者就業・生活支援センターや公共職業安定所などと連携することも多く、多様なサポートを受けることができます。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害をもっている方を対象に支援する公的機関です。障害を持った人が安心して私生活を送れるようにサポートを実施しています。ADHDを持っている人のなかには、どのように就職活動を行えばよいか、わからない人がたくさんいます。そのような人を対象に、具体的なアドバイスや相談を行います。
就労後も、障害者就業・生活支援センターと職場が連携して働きやすい環境を調整してくれます。
ハローワーク
ハローワークは全国に500箇所以上設置されています。求人検索はもちろん、就職に関するさまざま相談に乗ってもらえます。障害を持っていない人も利用する機関であり、多くの人が利用しています。ここでは、ADHDを持っている人が利用できるハローワークのサービスについて紹介します。
障害者トライアル雇用事業
障害者トライアル雇用事業とは、障害をもっている人を対象に原則3か月間試行雇用し、会社側が継続的に雇用するかを決める制度です。障害者トライアル雇用事業を利用すると、その会社で働き続けられるかを判断しやすく、入社後のミスマッチを予防することができます。「就労経験のない職業に就くことを希望している」「過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している」「離職している期間が6か月を超えている」などの要件を満たす方を対象としていますので、未経験の仕事に就きたい場合に活用できます。
精神・発達障害者雇用サポーター
ハローワークは、精神・発達障害者雇用サポーターを設置しており、障害のある人を対象として専門的な就職支援や、職場定着支援を行っています。サービスを利用する人だけでなく、事業主に対しても発達障害者の雇用にかかわる助言、仕事に就いている方の定着支援を行います。
ハロートレーニング
ハロートレーニングとは、就職を希望する人にスキルや知識の講義を提供している公的な制度です。ハロートレーニングは障害を持っていない人でも利用できるうえ、ADHDなどの障害を持っている人は障害者訓練の区分を受講できます。受講料は基本的に無料です。IT、建設・製造、サービス、介護、デザイン、理美容に至るまで多種多様な訓練分野が網羅されており、住宅リフォーム、OAシステム開発、Web設計、3DCAD等の昨今の時代のニーズに即したコースや第一種電気工事士、宅地建物取引主任者、介護職員初任者研修等の資格取得をめざすコースもあります。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターとは、障害を持っている方に対して職業リハビリテーションを提供しています。地域障害者職業センターが行う支援は専門性が高いのが特徴であり、相談支援の専門家や障害者職業カウンセラーが在籍していることがあります。
転職エージェント
障害者雇用に対して手厚いサポートを行っている転職エージェントがあります。なかには障害者雇用に特化しているエージェントもありますので、利用を検討するとよいでしょう。
地域若者サポートステーション
地域若者サポートステーションは、就労が困難な15歳~49歳の人を対象した施設です。働くことに悩みを抱える人や就職できるか不安に感じる人は、地域若者サポートステーションに相談しましょう。
ADHDの人に向いている仕事・職業
ADHDの人に向いている職業は、発想力や独自性を活かせるデザイナーやイラストレーターなどです。
また、自分の好きなことに高い集中力を発揮できるので、プログラマーなどもおすすめです。
ADHDの人に向いていていない仕事・職業
ADHDの人に向いていない仕事としては、秘書や経理などが挙げられます。細かいスケジュールを管理する仕事やマルチタスクを必要とする仕事は、ADHDの人には苦痛に感じるかもしれません。基本的に一つのことに集中する仕事のほうがADHDの人は力を発揮します。
ADHDの人が就職、転職先を選ぶときのポイント
ADHDの人が就職や転職をする際は、いくつか注意するポイントがあります。具体的にどのようなポイントに気をつけるべきかを確認しましょう。
周囲の理解が得られるか
就職する際は、周囲の理解を得られるかを確認してください。たとえば、ADHDの人は特性に対する配慮を得ることができれば高い能力を発揮することが多々ありますが、配慮を得られないとつらい思いをすることもあります。就労支援サービスなどを通して就職先を探すさいには、スタッフから客観的な意見をもらい、志望している会社が特性に配慮してくれるかを慎重に検討するとよいでしょう。
柔軟な働き方ができる職場がおすすめ
柔軟な働き方ができるかどうかも確認してください。二次障害などで体調が不安定なばあい、体調を考えて働ける日にちを選べる職場など、勤務の自由度の高い職場を探すことをおすすめします。
自分の特性にあう仕事を選ぶ
自分の特性にあう仕事を探しましょう。高い集中力や創造性といったADHDならではの特性を有していれば、それを最大限に活かせる仕事に就くと、いきいきと働けることでしょう。働きたい職場をいくつかピックアップして、ご自身の特性を活かせる就職先を探してください。
まとめ | ADHDの就労は就労移行支援事業所へ
今回は、ADHDの人が受けられる各種就労支援サービスについてご紹介しました。就労支援サービスを利用することで、効率的に希望の職を探すことが可能です。悩みや不安なども気軽に相談できるため、いずれかの就労支援サービスの利用を検討してみましょう。
就労移行支援事業所では、発達障害の方が希望に就くための各種サポートや、ビジネスマナーやパソコンスキルを高められるプログラムを実施しています。これから就職活動を始めようと考えている方は、利用を検討してみてください。
【監修】佐古順子
サービス管理責任者
職場適応援助者(訪問型ジョブコーチ)
ビジネス実務マナー3級
メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種