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就労移行支援を利用しても就職できないのはなぜ?原因と解決策を紹介

2024.12.14

就労移行支援事業所は障害を持っている人が仕事を見つけ、就職するための多種多様なサポートを行っています。しかし、「就労移行支援事業所に通ってもなかなか就職が決まらない」という方もいます。残念ながら、就労移行支援のサポートを受けさえすればすぐに就職が決まる、というわけではないのです。今回は、就労移行支援事業所を利用してもなかなか就職が決まらない原因やその解決方法について解説します。目下、就労移行支援事業所に通っている方も、利用を考えている方も、ぜひ参考にしてください。

目次

就労移行支援を利用しても、就職できないって本当?

就労移行支援を利用しても就職できない原因と解決策

通所段階で休みや遅刻・早退が多い

志望業種や就職先の幅が極端に狭い

障害特性や必要配慮を把握できていない

必要な業務スキルが足りていない

就職に対する積極性が足りていない

就労移行支援を利用した就職を目指すには、事業所選びも重要

まずは、いくつかの就労移行支援事業所を見学する

必要とするサポート、プログラムが受けられるかを確認する

資格を持った専門職員が在籍しているかを確認する

雰囲気、支援員との相性が合うかも大切なポイント

就職実績を確認する

就労移行支援を利用しても就職ができなかった/一般企業に就職をしない場合は?

1.就労移行支援の延長を申請する

2.就労継続支援に移行する

3.職業訓練を利用する

4.職業エージェントを利用する

まとめ

 

 

就労移行支援を利用しても、就職できないって本当?

就労移行支援を利用しても就職できない…といった声を聞くことがありますが、果たして本当なのでしょうか。厚生労働省のデータでみると、令和4年度において就労移行支援事業所で訓練を受けた方の就職率は57.2%となっており、利用した過半数以上の方が就職できています。

データでは就労移行支援事業所を利用した方の多くがお仕事に就いています。しかし、なかには就職できなかった方もたしかに存在します。就職できなかったケースとして、どのような原因が考えられるのでしょうか。

就労移行支援を利用しても就職できない原因と解決策

就労移行支援事業所を利用しても、必ず就職できるとは限りません。ここでは、就労移行支援事業所を利用したものの、就職に至らなかった方の原因と対策について解説します。

通所段階で休みや遅刻・早退が多い

就労移行支援事業所への通所段階で、休みや遅刻、早退が多いとなかなか採用が決まりません。通所が不安定な方は、企業側からの信頼を得られず、採用される確率が減少します。就労移行支援事業所を利用するさいには、安定的に事業所に通所することが重要です。利用開始当初は体調や生活リズムが不安定で欠席が多くとも、体を慣らして徐々に出席数を増やしていけば問題ありません。

【解決策】

欠席の原因が体調不良や生活リズムの乱れならば、スタッフのアドバイスのもと、まずは体調管理や生活リズム改善を行います。一般就職すると、雇用契約の条件下で働く必要があります。就労移行支援事業所に1週間に3日しか出勤していないのに、1週間に5日勤務の仕事を始めるとなると体がついていかず、仕事を続けることが難しくなります。就労移行支援事業所に安定して通うことで、一般企業で働くさいの体力を養い、適切な生活リズムを身につけることが可能です。

志望業種や就職先の幅が極端に狭い

志望業種や就職先を極端に狭めると、採用率は下がります。どうしても就きたい仕事があったとしても、第2希望、第3希望の仕事まで見据えて就職活動を行うことが重要です。

【解決策】

まずは、自分のできる仕事を考えましょう。理想を高めすぎると、まわりのライバルのレベルも高くなります。自分のしたいことを分析することや、企業や業界の研究を行うことで視野が広がり、やりたい仕事の幅が広がることもあります。さしあたっては第2希望の仕事に就いて、生活を安定させてから本当にやりたい仕事に向けて就職活動を行う、というような中長期的な計画も考慮しましょう。

障害特性や必要配慮を把握できていない

自分の障害特性や配慮事項を把握できていないと、なかなか就職できません。障害者雇用においては、企業の側も障害を持った求職者に対してどのようなサポートを行うことができるのかを模索しています。障害特性を事前に企業に説明できないとサポートの方針が定まらないので、採用を見送られてしまうのです。

【解決策】

ご自身の障害に起因する困りごとがどのようなものか、自己分析することが大切です。さらに、主治医や支援機関のスタッフの客観的な意見を聞きましょう。就労移行支援事業所に通所し、さまざまなプログラムに参加してみることもおすすめです。スタッフのサポートを受けながら、自分の得意不得意を明確にすることができます。自分の障害特性が把握できたら、それを面接の場で簡明に説明できるようプロフィールシートを作成しておくことも重要です。

 

必要な業務スキルが足りていない

必要な業務スキルが足りていない場合も採用されません。とくに専門的な仕事を行う場合は、スキルと経験、実績が必要になるケースが多々あります。

【解決策】

資格を取得したり、プログラムに積極的に参加しましょう。事務系の仕事の場合はパソコンを扱えなければなりません。パソコンの基礎的なスキルを持っていることを証明するため、office系の資格を取得しましょう。資格を保持することで企業側からの印象は大きく変わります。

就職に対する積極性が足りていない

就職に対する積極性や意欲が足りていない場合は、なかなか企業から採用してもらえません。前提として、自分が本当に働きたいのかを考える必要があります。仕事に就いて賃金を得るというライフスタイルを、すべての人が目指さなければいけないわけではありません。

【解決策】

就職に積極的になれない原因を分析しましょう。就職を希望しているものの、体力的な問題や就職活動の進め方などで壁を感じているのであれば、就労移行支援事業所などで、ご自身の今の状況を相談し、無理なく就職活動を進められるように軌道修正を行いましょう。就職することそのものについて不安を感じている方や自信がなくなっている方などは、ご自身のモチベーションについて考えなおすことが重要です。この場合も、支援機関などに相談し、一人で悩まないようにすることが肝要です。

就労移行支援を利用した就職を目指すには、事業所選びも重要

就労移行支援事業所を利用しても就職がなかなか決まらない場合、事業所との相性が悪い、というケースが考えられます。就労移行支援事業所はたくさんありますが、それぞれに得手不得手があります。ここでは、就労移行支援事業所の選ぶポイントについて解説します。

まずは、いくつかの就労移行支援事業所を見学する

自分に合った就労移行支援事業所を探すために、複数の事業所を見学しましょう。事業所の雰囲気は、実際に足を運んでみないとわからないものです。ホームページなどでは良く見えても、行ってみると雰囲気が合わないケースがあります。ご自身と相性のよいところを実際に自分の目で見て判断する必要があります。
就労移行支援事業所には定員があり、満員で通所できない可能性があります。人気の就労移行支援事業所では定員に空きがでるまで待つ必要があるため、事前に確認しましょう。

必要とするサポート、プログラムが受けられるかを確認する

就労移行支援事業所に、必要とするサポート体制があるかどうかの確認も重要です。事業所により行うサポートプログラムが異なるため、分からない場合は事前に事業所に連絡しましょう。資格取得を目指している方は、ご自身の希望の講座が実施されているかも確認しましょう。事務職で働きたいと考えている方は、パソコンの講座が充実している事業所がおすすめです。その他、ビジネスマナーや面接対策を学べる事業所を選択するのもよいでしょう。

資格を持った専門職員が在籍しているかを確認する

資格を持った専門職員が在籍しているかも確認してください。専門的な資格を持っている方がいると、安心してサポートを受けられます。公式ホームページなどでスタッフの資格情報を記載している場合があるため確認しましょう。

雰囲気、支援員との相性が合うかも大切なポイント

事業所の支援員や雰囲気などがご自身に合っているかどうかを確かめることも重要です。あまり相性の良くない事業所に長期間通い続けると、ストレスをためる原因になります。事業所だけでなく、スタッフとの相性も確認してください。不安に感じたさいにすぐ相談できそうかどうか、というのがひとつの判断基準です。事業所や支援員との相性を知るには、実際に見学する必要があります。しっかりとチェックして安心して通所できるようにしましょう。

就職実績を確認する

就職実績や定着実績も確認してください。とくに専門的なスキルの必要な職に就きたい方は、志望する業界、業種への就職実績を事業所に確認するとよいでしょう。たとえば、プログラマーとして活躍したい場合は、プログラマーとして活躍できる講座や就職サポートがあるかはもちろん、プログラマーとして就職した人がどのくらいいるかを確認してください。

就労移行支援を利用しても就職ができなかった/一般企業に就職をしない場合は?

就労移行支援を利用しても必ず就職できるとは限りません。事業所に通ってみて、一般就労で働くという以外の選択肢が見つかることもあります。そのため、就職しなかった場合の進路についても知っておく必要があります。

1.就労移行支援の延長を申請する

就労移行支援の延長を申請する方法があります。就労移行支援は基本的に2年間しか利用できませんが、正当な理由がある場合は延長申請が認められます。延長するかどうかは、自治体の基準や個人の状況などを総合的に判断され、必ずしも延長できるわけではないので注意が必要です。
延長を申請すると、審査が行われます。審査が通ると引き続き就労移行支援事業所を継続して利用できます。延長を申請するさいは、住民票のある自治体に申請しなければなりません。就労移行支援の延長申請は初めての方には複雑なため、事業所のスタッフといっしょに進めていくのが望ましいです。

2.就労継続支援に移行する

就労移行支援を利用して就職できなかった場合や、価値観や体力的な面から一般企業で働くこと以外のライフスタイルを当面において選択する場合、就労継続支援に移行するという選択肢があります。一般企業と比較して、ご自身のペースで働いたり、授産活動を行うことができます。
就労継続支援事業所にはA型とB型があります。引き続き一般企業の就職を目指す方は就労継続支援A型、自分のペースでゆっくり通所したい方は就労継続支援B型を利用するのがおすすめです。

3.職業訓練を利用する

ハローワークが実施している職業訓練を利用すると、就職できる可能性が広がります。職業訓練では、就職するための技術やスキルを身につけられます。職業訓練の訓練内容は多岐にわたり、事務系やIT系など幅広いジャンルが用意されています。
職業訓練の期間は受講するプログラムにより異なり、1か月で終わるものから、1年ほどの期間を要するものまでさまざまです。職業訓練で身につけたスキルは実際の現場で活かせることが多く、就職活動をおこなう場合にもアピールポイントとして活用できます。
また、職業訓練のなかには、そのまま資格を取得できるケースがあります。専門的な仕事に就きたい方は、現場で必要な資格を調べてから職業訓練を探すことをおすすめします。

4.職業エージェントを利用する

なかなか就職先が決まらない方は、職業エージェントを利用しましょう。職業エージェントを利用すると、現在のスキルや状況に応じて希望の就職先を探してくれるため、効率的に就職活動を行えます。
職業エージェントのなかには、障害者を専門とする会社もあります。障害者を専門とする職業エージェント会社を利用すると、ハローワークや一般求人に掲載されていない採用情報を提供してくれる可能性があります。職業エージェントは行政サービスと併用できるため、早く就職したい方は職業エージェントを活用しましょう。

まとめ

今回は、「就労移行支援を利用しても就職できない」といわれる原因について解説しました。就職できない原因として、志望業種の幅が狭かったり必要なスキルが足りなかったりするケースが多く見られます。就労移行支援事業所のスタッフと相談しながら改善していきましょう♪

 

【監修】佐古順子

サービス管理責任者

職場適応援助者(訪問型ジョブコーチ)

ビジネス実務マナー3級
メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種